過去のお知らせ

第37回日本トキシコロジー学会学術年会について
  第37回日本トキシコロジー学会学術年会が、2010年06月16日(水)-18日(金)まで沖縄コンベンションセンターにて開催された。開催期間中の沖縄は梅雨の時期であったが、参加者は約900名と大変盛況で5会場において熱心な発表がなされた。特に今後ますます重要性が増すと思われた発表として in silico による化学物質の有害性(毒性)評価法として、「シンポジウム2 S2 化合物の毒作用発現とその回避:構造毒性相関からのアプローチ」と題した発表があった。

S2-1 毒性データベースと毒作用予測 (1):データベースの構築 - 山田 隆志 先生(製品評価技術基盤機構)
 化審法28日間反復投与毒性試験結果等に基づくデータベースの構築を行うことで毒作用機序に基づく関連物質の分類・区分が可能となった物質についての事例発表があった。
S2-2 毒性データベースと毒作用予測 (2):データベースの利用 - 林真 先生(食品農医薬品安全性評価センター)
 NEDOの研究支援による化学物質に対する有害性(毒)作用に対するアプローチ手法の総説的発表としてin silico による化学物質の有害性の予測を「カテゴリーアプローチ手法」により行うことについて発表があった。
S2-3 毒作用発現回避のための化合物の化学修飾 - 内田 力 先生(田辺三菱製薬)
 企業からの活用事例として化学構造変換による毒作用回避にはin vitro の評価系が有効であり、構造毒性相関の知識の蓄積が必要との発表。
S2-4 毒作用回避のための化合物の代謝予測 山添 康 先生(東北大学大学院薬学研究科)
 薬物動態における代謝(生体内構造変換)は、物質の脂溶性と代謝速度の関連が指摘されたことで、物質の化学構造からその易代謝性の予測がおこなわれている。
CPY1から4のP-450分子種は、高い構造の可変性を有し、基質構造に柔軟に対応して機能していると考えられることから、基質構造同士を一定の規則のもとに組合せることで「基質収容空間」を示すことが可能と考え、P-450分子種ごとにテンプレートを作成し、このテンプレートに被験基質を展開させることで合致点や空間・物性要求性、個々の配向・コンフォーマーについての比較をスコア化後、高ポイントを占める相互作用から優先的に反応が進行するよう設定したプログラムについて発表があった。
CYP2E1やCYP1A2については精度が良く、ヒトでの代謝予想が可能とのことであった。

 また、学会賞は、「生体内多臓器コメット法の開発とその毒性学的応用」と題して、津田 修治 先生(岩手大学農学部獣医公衆衛生学教室)より、遺伝毒性試験の新規試項目として注目されているコメットアッセイ法に関する報告発表がなされた。さらに、安仁屋 洋子 日本トキシコロジー学会年会長(琉球大学医学部)招待講演として「毒性発現機序と代謝,種差」と題して、山添 康 先生(東北大学大学院薬学研究科)より、化学物質の毒作用にしばしば種差が認められ、この事が安全性評価を難しくしている要因の一つであるが、近年機能タンパク発現機序の解析、in vitro手法の進歩や分析手段の発達により、毒作用の全体像を迅速に理解することが可能になりつつあること、また、分子レベルでの毒作用機序を薬物及び脂質の代謝動態の観点からいくつかの毒性事象を例にとり、代謝能力の違いと毒性の種差との関連性について発表がなされた。最終日には、パネルディスカッション 形式で「in vitro トキシコロジー試験法の行政的な受け入れ 」と題し、以下のディスカッションが行われた。特に毒作用(有害性)評価としての最終的評価指標の位置付けである「in vivo 試験」に対し、各種「in vitro 毒性試験」の有するバイオマーカーとしての予測性について議論がなされた。特定の部分的毒作用(と考えられる反応)を検出するための手法として開発・発展してきた「in vitro 毒性試験」の結果を再構築し、総合的に解析することの意義並びに困難さ、また、最終目的であるヒトに対しての外挿を可能とするための議論等熱心な討論が展開された。

PD-1 新しい感作性および局所刺激性(皮膚・眼)試験法のOECDテストガイドライン - 小島 肇 先生(国立医薬品食品衛生研究所)
ヒトへの外挿が最も有意義に進行している代替法試験の分野としての現状についての発表とその他代替法の公的承認に関する問題点等についての発表。
PD-2 NEDOで開発した試験とその行政的な受け入れ検討 - 田中憲穂 先生((財)食品薬品安全センター秦野研究所)
代替法試験の困難とされている毒性試験である「発がん性、発生毒性及び免疫毒性の3分野」について現況報告がなされ、2011年度にはバリデーションが開始される予定とのことであった。また、発がん性評価試験としての形質転換試験系の検討結果発表。
PD-3 リスク評価におけるin vitro遺伝毒性試験の役割 - 本間 正充 先生(国立医薬品食品衛生研究所)
一部の遺伝毒性試験における高い偽陽性率がICH(医薬品規制調和国際会議)で議論されたことで、検出感度のみの向上に基づいたハザード情報の収集からリスク評価(有害性評価と曝露評価 = リスク評価)への遺伝毒性試験の毒作用に関する指針転換が図られていること、また、これらに付随した試験法の開発についての発表。
PD-4 in vitro 内分泌かく乱試験法のOECDガイドライン受け入れ - 小野 敦 先生(国立医薬品食品衛生研究所)
内分泌かく乱物質のスクリーニング評価法の一つである「エストロゲン受容体転写活性化試験法」を事例としたOECDガイドライン化に対する課題や対応についての発表があり、行政的に受け入れられる試験法とするための新たな試験法のガイドライン化に対する今後の課題や対応についての発表。
(2010年6月16日〜18日開催の第37回日本トキシコロジー学会学術年会より)

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